数年前、これまで店だったスペースを部屋に改装しました。
両親も年を取ってきて、商売が負担になってきたことや、自宅の周りにあるスーパーマーケットやコンビニエンスストアで同じ商品を売るようになってきたことで、さっぱり売上が上がらなくなったのです。
そこで、もう思い切って店をやめようということになり、母が長い間望んでいた、来客があったときに上がってもらえる部屋に作り替えることにしました。
そのため部屋との間取りの関係から、店の時には引き戸だった玄関が、今度はドアになりました。
すっかり見た目の印象も変わり、新しい部屋ができて居住空間にゆとりができた我が家ですが、2年前に検査の結果、アルツハイマー型認知症と診断された父の症状が、昨年腰の骨を二度圧迫骨折したことで、急速に進んできました。
アルツハイマー型認知症の特徴の一つに、些細なことですぐに怒り出すとか、とにかくカッとしやすくなるというのがあるのですが、もともと頑固でプライドが高い父は、アルツハイマー型認知症になるまでにもすでに怒りっぽい性格でした。
それに認知症が加わって、夜中に腹が立つと言って起きだすのです。
誰かが表にいて、それが自分を腹立たしい気持ちにさせていると言い張る父は、怒鳴りつけてやると真夜中に玄関から外へ出て行こうとします。
けれど、新しくとりつけたドアは二重ロックになっていて、下の部分の鍵はサムターンという取っ手の部分が取り外せるようになっています。
鍵をかけたあと、握って回す部分が取り外せる構造になっているため、外から侵入するときにたとえ鍵周辺のガラスを破っても、つまんで回す部分がないことから、鍵を開けることが出来ないドアとなっているのです。
これが、最近では外から入ってくるのを防御するのに役立っているのに加え、父が中から外へ出るのを妨げる役目を果たしてくれています。
以前は自分でとりつけ、鍵を解除していたのですが、サムターンの意味もやり方もわからなくなった今は、徘徊防止に役立ってくれているのでした。